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笑いかけてくれた天使

2014/09/17 22:45
 電車の中で本を読んでいた私の隣に座ったのは、小さな赤ちゃんを抱っこしたお母さんでした。元気のいい赤ちゃんは、難しそうな顔をして本を読んでいるおじさんが気になるのか、うーうーあーあーと言いながら盛んに手と足を伸ばしてくる。お母さんはすみませんすみませんと私に謝っている。私の腕にふれた小さな手は柔らかかったなぁ。私の脇腹をバンバンと蹴った足の力は強かったなぁ。
 本当は読んでいた本に感動して、もう少しで泣きそうになっていたんだ。一生懸命に涙をこらえていたんだ。でも無理やり頬を緩めて振り向いたんだ。そうしたらさ、まるで天使のような笑顔でキャッキャッって。
 前に言ったことあったでしょ。赤ちゃんには認められているんだ、おいらって。
 その時読んでいた本は次の一冊。

『花咲家の人々』村山早紀(徳間文庫)再読
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――風早の街で戦前から続く老舗の花屋「千草苑」。経営者一族の花咲家は、先祖代々植物と会話ができる魔法のような力を持っている。併設されたカフェで働く美人の長姉、茉莉亜。能力の存在は認めるも現実主義な次姉、りら子。魔法は使えないけれども読書好きで夢見がちな末弟、桂。三人はそれぞれに悩みつつも周囲の優しさに包まれ成長していく。
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 新作を読む前に一作目を再読しておかなきゃ。ということで電車の中で読み始めたのですが、いやぁーまいった。読み進めていくうちに、風早の街の一員になり、千草苑の関係者になり、花咲家の親戚になり家族になり、どんどん話に入り込んでいってしまった。隣の赤ちゃんに懷かれていなかったら、電車の中でボロボロと泣いていたぞ、きっと。
 簡単に「いいお話でした」で終わる物語ではないんだぞ。「みんないい人ばかり」で済むお話ではないんだぞ。みんなみんなどこかに持っているのに気付いていない「何か」を知らせてくれる小説なんだ(ちょっと熱くなってます)。

『花咲家の休日』村山早紀(徳間文庫)読了
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――勤め先の植物園がお休みの朝、花咲家のお父さん草太郎は少年時代を思い起こしていた。自分には植物の声が聞こえる。その「秘密」を抱え「普通」の友人たちとは距離をおいてきた日々。なのにその不思議な転校生には心を開いた…。月夜に少女の姿の死神を見た次女のりら子、日本狼を探そうとする末っ子の桂、見事な琉球朝顔を咲かせる家を訪う祖父木太郎。家族それぞれの休日が永遠に心に芽吹く。
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 風早の街って、誰もが心の中で想う街なんだろうな。花咲家の人々って、君やあなたやあの人やその人や私やボクのことなんだろうな。そう思いたい。
 不思議だね、このシリーズを読んでいると、毎日何気なく見ている道端の草花や街路樹を立ち止まって見つめてしまう。いつもの風や自分の影や季節の香りに意味を探してしまう。そんな不思議な力のある小説なのです。
 まいったなぁと思ったのは、「朝顔屋敷」かなぁ。木太郎さんの寂しさと悲しさと優しさと暖かさと強さ。いろいろなこと思い出して考えて、悲しくてうれしくて泣きたくなった。

(今日のふれあい)
 赤ちゃんと握手してしまった。
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泣く九月

2014/09/16 18:22
 こんな歳になると(こんな性格の人間になると)、10年前も20年前も30年前も、考えていることもやっていることも今とたいして変わってないよなぁと、ため息とともに思ったりする。簡単に言うとちっとも成長してないってことなんだけど、問題は回りはそうは見てくれないってことなんだよなぁ。皺と白髪が増えたとともに、人間としても少しは大人になったんじゃないの、なぁーんてさ、思ってないか。まぁどうでもいいけどさ(なぁーにを言ってるんだか)。

『未必のマクベス』早瀬耕(早川書房)読了
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――IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられる−。「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港法人の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして恋愛小説。(待ってましたと言ったら嘘になるよなぁ)
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 この紹介文には続きがあって、「伝説のデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』から22年−。運命と犯罪と恋についての長篇第2作」とある。

 書店で作者の名前を見て、自分の目を疑ってしまったよ。この作者のデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』は、私の生涯の中で10本の指に数えられる作品なのですよ(ちと大げさかな)。その作家の22年ぶりの第2作とはねぇ、いやぁー驚いた。

 今回の作品の内容をどう言ったらいいのかなぁ。ミステリ? 経済小説? サスペンス? 恋愛小説? ゴシック・ロマンス? 謀略小説? もうそれらを一緒くたにした物語としか言いようがない。面白いです。今のところ今年一番と言ってもいいかも知れない。
 『グリフォンズ・ガーデン』とは全く違う小説世界ではあるのだが、この作家さん、この22年間いったいどういう生き方をしてきたのかなぁ。もしかして今回の作品のような社会の中にいたのかなぁ、なんて心配してしまうほど真に迫った物語でした。
 書名にあるように、シェークスピアの『マクベス』に則って物語は展開するのだが、それを凌ぐほどの残酷さと無常さと人間臭さが繰り広げられる。その内容の壮絶さを主人公のどこかすっとぼけた言動が、辛うじてこれがフィクションであるということを知らせてくれるのだけれど。分厚い一冊でも一気読みの面白さでした。(ヘタな感想で申し訳ない。90点)

(今日の追記)
 デビュー作の『グリフォンズ・ガーデン』は是非とも読んで欲しいんだけど、絶版なんだよねぇ。復刊してくれないかなぁ。
記事へなるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0


地平への目線

2014/09/15 19:13
 昨日まで裏の神社はピーヒャララ。季節は十分に秋なのである。暑くても寒くても晴れても曇りでも雨でも幸福でも不幸でも一人でも大勢でも、季節はいつも通りピーヒャララと過ぎていく。

『木霊草霊』伊藤比呂美(岩波書店)読了
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――日米の自然観の違い、植物をめぐる文化との関わり…。アメリカと日本で生活する著者が、生々流転する植物を前に、生命の在り方を柔らかな感性で問う。
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 ものすごい人気だったんだから、詩人“伊藤比呂美”さんは。私にとっては憧れの人だったかなぁ。
 この本、よく行く書店で棚一面に陳列されていて、その迫力がすごいのなんのって、思わず手に取ったのでした。これを「本霊」というのかな。
 とにかく「自然」な文章、内容、言葉、風景、生き方。別世界にいるかのような読書体験だったのでした。(感想が難しいのだよ。81点)

『遠野物語remix』京極夏彦・柳田國男(角川ソフィア文庫)読了
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――遠野の郷に、いにしえより伝えられし怪異の数々。民俗学の父・柳田國男が著した「遠野物語」を、京極夏彦が深く読み解き、新たに結んだ、いまだかつてない新釈“遠野物語”。原典「遠野物語」も併載。
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 京極さんが積極的に取り上げてくれるお陰で、今年は間違いなく「柳田國男の遠野物語」を読み直そうという年になりそうだ。
 実を言うと私、高校の時に「郷土研究部」というところに1年間だけ在籍していたことがあり、『遠野物語』を読んでいるんだなぁ。なんていっても遠野は私の生れ故郷の近くであり、「郷土研究部」の時は地元のお年寄りに昔話を聞いて回ったりしていたのですよ(意外でしょ)。
 まだまだ他にも類似書が出ているようで、まんまと出版社の策略に乗っかってやろうかなと思っています。(うーむ、78点かな)

『わたしの恋人』藤野恵美(角川文庫)読了
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――彼女いない歴=年齢の高校1年生・龍樹は、森せつなに告白。せつなは「本物のわたしを知ったら彼は幻滅するかも」と不安になるが、2人はつきあい始める。のびのびと育った龍樹に触れ、頑ななせつなの心は次第にやわらいで…。
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 なぜか時々、こういう小説を読みたくなるんだよなぁ。笑ってもらって結構です。正直に言っちゃうと、こういう剛速球の直球のようなせつな系の恋愛小説が大好きなのですよ。悪いことですか? 次にこの作品の続編のような『ぼくの嘘』という本が待機しています。少年・少女の恋愛小説にしばらく溺れてやります。(まずいかなぁ。78点)

(今日の忠告)
 ちょっとずつ更新すればいいのに。
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自分への殺意

2014/09/14 14:17
 9月に入って突然“恩田陸”さんが読みたくなった。理由はない。8月は“宮部みゆき”さんだった。時々こういうことが私には起こる。そんでもって旧作の乱読が始まると、その作家の新作が、特に大作が出版となる。ということは今月は恩田さんの新作が出るっていうことなのかなぁ。なんの取り柄もない私の特技と小さな声で言っておこうっと。

『六番目の小夜子』恩田陸(新潮文庫)再読
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――津村沙世子−とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。
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 どうしても言っておきたいのだが、わたくしこの作品、1992年7月発行の新潮文庫/ファンタジーノベル・シリーズっていうよくわからない不思議なシリーズの一冊として読みました。この文庫シリーズはよくよく調べてみたら、わずか2年で13冊の発行という短命に終わったみたい。つまりは「売れなかった」のだなぁ。紹介文で言われている「伝説」というのは、恩田さんはデビュー作ではあまり評判にならなかったっていうことなのだなぁ(多分)。そんな作品を、私はしっかりと見出していたのでした。という自慢でした。

 久し振りに読み直したのですが、なかなかに怖いお話ですねぇ。読み終えて、それなりの決着に満足しているのですが、なんかねぇ腑に落ちない。まだ解決していないのではないかという思いがだんだんと強くなってくる。前を歩く見知らぬ人が突然振り向いて「まだ終わってないよ」と言いそうな気がしてしょうがない。いやはや。デビュー作からしっかり“恩田陸”さんだったんだなぁと気付かされたのでした。

『ブラザー・サン シスター・ムーン』恩田陸(河出文庫)再読
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――ねえ、覚えてる? 空から蛇が落ちてきたあの日のことを−。本と音楽と映画、それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。高校の同級生、楡崎綾音・戸崎衛・箱崎一のザキザキトリオが過ごした大学時代を描く、青春小説の新たなスタンダードナンバー! 本編に加え、三人の出会いを描いた単行本未収録作「糾える縄のごとく」、さらに文庫版特別対談「恩田陸、大学の先輩と語る」を収録。
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 あれっ、こんなお話だっけ、と意外にも新鮮な気持ちで読み直すことができました(完全に内容を忘れていたってことなんだけどね)。
 恩田さんの「素」が出ている作品のような気がする。大好きな本の話、映画の話、音楽の話が何気なく物語の中で語られ、意外な謎や事件が起きているわけではないのに、怪しげで不可思議な雰囲気十分のお話になっている。こういう感じ、この作家さんの得意技でもあるんだよなぁ。さすがです。

『蛇行する川のほとり』恩田陸(中公文庫)再読
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――演劇祭の舞台装置を描くため、高校美術部の先輩、香澄の家での夏合宿に誘われた毬子。憧れの香澄と芳野からの申し出に有頂天になるが、それもつかの間だった。その家ではかつて不幸な事件があった。何か秘密を共有しているようなふたりに、毬子はだんだんと疑心暗鬼になっていく。そして忘れたはずの、あの夏の記憶がよみがえる。少女時代の残酷なほどのはかなさ、美しさを克明に描き出す。
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 これって、初めは3カ月連続で新書の形で出版されたんだよね。それから一冊にまとまって単行本で出て、今回の中公文庫になって今は集英社文庫かぁ。如何なる事情があってこうなったのかなぁ。こういう変なところが気になるのです。

 最初に新書で出た時に読んだのですが、毎月ハラハラドキドキというか、早く次が読みたいよぉと思っていると語り手が変わって話が続くという、読者の心を完全に掴んで離さないぞっていう感じの物語でした。
 それにしても、こういう女子高生とかを書かせるとうまい作家さんだよねぇ。危うさであるとか妖しさであるとか、不安定であるとかあやふやなとでもいうのか、漠然とした美しさと不気味さの合わさったお話だったのでした。傑作。

(今後の予定)
 まだまだ続く「“恩田陸”さん集中読書月間」なのです。
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眠りの森の落し物

2014/09/12 23:52
 そろそろ年末の「今年のベスト本」とかいう、つまらないお祭りのための本がソロリソロリと出始めたのかなと思わずにはいられない今日この頃。もうそんなものには惑わされないもんねぇと強がってはいるものの、本屋さんの新刊コーナーにどうしても目がいってしまうのです。
 でもですねぇ、前にも言ったかもしれませんが、わたしく最近の小説界(こんなものがあるかどうかはわかりませんが)には絶望しているのです。経済界、警察内部、医療問題、政治問題等々、なんかさぁ、題材に夢っちゃうもんがなさすぎませんかねぇ。
 グチを言いだすと長くなるので止めますが、自分の専門分野の中での想像力ってさ、得意そうに言ってる割に面白くないからね(これじゃ何言ってるのかわかんないよねぇ)。

『花や咲く咲く』あさのあつこ(実業之日本社)読了
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――昭和十八年、初夏。女学校三年生の三芙美は、思いがけず手に入った布でブラウスを縫い始める。女学校のマドンナ・和美、韋駄天の詠子、あくびが似合う則子。美しい布に触れ、笑い合う四人にも、戦争の暗い影が忍び寄っていた−。著者がはじめて、太平洋戦争を舞台に描いた、感動の“戦時下”青春小説。
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 へぇー、はじめての戦争物なんですねぇ。うまくてさすがな作家さんだよねぇ。
 ただですね、“あさのあつこ”さんでなければ書けなかった小説っていう気がしなかった(すみません)。なにもかもが無難に終わってしまっているのです。歴史の真実という枠を意識しすぎてしまったのかなぁ。うーむ、残念。(泣けるんだけどね。75点)

『今日の放課後、短歌部へ!』千葉聡(角川書店)読了
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――注目の歌人にして高校の先生である「ちばさと」が、生徒と共に躍動する日々を描いた熱血青春短歌エッセイ集。感動と笑いと涙の日々、念願の短歌部は果たして−。巻末には穂村弘氏、東直子氏との特別座談会を収録。
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 いやぁー面白い。フィクションのようでノンフィクションのようで学校小説のようで青春小説のようでユーモア小説のようでエッセイのようで教育論のようで、そしてそしてしっかりと「千葉聡個人歌集」となっているという、世にも珍しい形の一冊。あぁこういう本って「あり」なんだなぁと、本当に感心したのです。短歌に興味がない人でも、ぜーったい面白いです。(感想になってるかなぁ。80点)

『許されざるもの』樋口明雄(光文社)読了
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――絶滅したオオカミを外国から移入し健全な生態系を取り戻す試験放獣プロジェクトが始まった。反対派や地元民の説得、中国奥地のオオカミ探索決死行など、環境省・野生鳥獣保全管理官の七倉は幾多の困難に立ち向かう。
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 突然こういう本も読みます。いろいろなジャンルの本を書く作家さんなのですが、どのジャンルでも手を抜くことなく、もう何を読んでも面白いという、稀有な作家さんと言ってもいいのではないかと、私は勝手に思っております。
 『約束の地』以来の「環境省・野生鳥獣保全管理官」シリーズになるのかな。もともとオオカミについてはいろいろと書かれていた作家さんですが、真正面から取り上げた作品となっています。その他のお話の部分と十分にマッチしていないかなぁという気はするものの、最後まで読ませる力強さはさすがです。ちょっと日本オオカミについて調べてみようかなぁ、なぁーんて思ったりして。(そんなに軽いテーマではないぞ。77点)

(今日の反省)
 サボっていた時間が長かっただけ。
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雨の日は傘があるから

2014/09/11 19:04
 傘も用をなさないような雨が降っています。いろいろなところで被害が出ているようで、こんな安全なところでしょうもないことを呟いていていいのか、なんてことを考えてしまう。目の前の水たまりをひょいと避けて通って「よかった」って安心して笑ってちゃダメなんだよなぁ。いろいろな面でさ。

『うたうひと』小路幸也(祥伝社文庫)再読
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――「百獣の王じゃないか。光栄だ」人気バンドのドラマー、崎谷貫太はその風貌から“笑うライオン”と呼ばれている。ある日人づてに、母親が倒れたことを知った貫太は、十年ぶりに勘当された実家を訪れることに。母親に嫌われていると思っていた貫太だったが、実家で驚くべき光景を目にする(「笑うライオン」)。誰もが持つその人だけの歌を、温かく紡いだ傑作小説集。
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 小路さんの新作を読み終えると、何故かもっともっと「小路ワールド」に浸っていたいと思えてきて、旧作を引っ張り出してきては読み直すという繰り返しなのです。ほとんど中毒といってもいい症状です。

 唐突なのですが、小路さんって「時間」の使い方のうまい人ですね。この作品集を読んで読み違えかもしれないけれど、そんなことを思いました。お話の中の時間の流し方が独特なんですよね。過去を語りながら突然今に到ったり、登場人物それぞれに流れる時間が離れたりくっついたり交差したり。いい話なんだなぁ、全て。まいっちゃったなぁ、今回も。

『つむじダブル』小路幸也・宮下奈都(ポプラ社)再読
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――本邦初!? 人気作家二人がつむぐ話題の合作! 小路幸也が兄の視点、宮下奈都が妹の視点で描く、家族の「ひみつ」の物語。小学生のまどかと高校生の由一は、年の離れた仲のよい兄妹。ふたりとも、つむじがふたつあり、お母さんは「つむじダブルは幸運の証」と子どもたちに話している。ある日、まどかがひとりで留守番をしていると、ひとりの女性から電話がかかってきた。お母さんは知らないひとだと言うのだけど、なんとなく様子がおかしくて−。兄妹それぞれの想いが胸に響く、やさしい家族の物語。
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 一部で問題作と囁かれた作品の再読(あくまでも一部で)。
 再読して思ったのですが、これって、なかなかに考え抜かれた作品ではないかと…。惜しむらくは、合作という形を取っていながら、片方の作家の世界観に片寄りすぎたお話になってしまったかなぁということ。もう少し二人の個性のぶつかり合いみたいなものが見たかった。なぁーんてね、「つむじダブル」のペンギン店長のつまらない呟きでした。

『エンドロール』鏑木蓮(ハヤカワ文庫JA)読了
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――映画監督になる夢破れ、故郷を飛び出した青年・門川は、アパート管理のバイトをしていた。ある日、住人の独居老人・帯屋が亡くなっているのを見つけ、遺品の8ミリフィルムを発見する。映っていたのは重いリヤカーを引きながらも、笑顔をたやさない行商の女性だった。門川は、映像を撮った帯屋に惹かれ彼の人生を辿り、孤独にみえた老人の波瀾の人生を知る。偶然の縁がもたらした温かな奇跡。
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 ずっと気になっていて、読みたい読みたいと思っていたのですが、今さらの読書となってしまった。結構好きな作家さんなのに、誰かに「どういう作風の作家さん」と聞かれるとうまく答えられない作家さんなんだよなぁ。
 「いいお話です」と簡単に言ってはいけないとは思うものの、テーマの割に少々安易な作りが気になってしまう。遺品のフィルムを見つける過程も、一人の老人の人生を辿る旅の話も、偶然の重なりだし掘り下げ方が中途半端だし、すべてが予定調和でしかないような気がするのです。もっともっと深く苦しく重いテーマだと思うのですよ。違う書き方があったんじゃないかなぁ。(もったいない。77点)

『想い出あずかります』吉野万理子(新潮文庫)読了
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――子供たちしか知らない秘密。岬の崖の下に石造りの家があって、魔法使いが「おもいで質屋」を営んでいた。想い出を担保にお金を貸してくれるという。でも二十歳までに取り戻さないと想い出は返ってこない。中学生の里華は、魔法使いと出会ってすっかり仲良しになり、共に青春の季節を駆け抜けてゆく。やがて二十歳を迎えた時…。きらきらと胸を打つ、あの頃が蘇る魔法のストーリー。
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 時々こういう物語を読みたくなるんですよねぇ。

 これって、きっと本当の話なんだと思う。こういう「おもいで質屋」は本当にあったんだと思う。大人って忘れるから。子供だった時の楽しいおもいでや悲しいおもいで、大事なことや大切にしていたこと、傷ついたことやみんなと笑いあったこと、そんなことすべて忘れてしまうから。そんなお話でした。(熱くなってしまった。79点)

(夢中になっていること)
 今月は「“恩田陸”さんを読み直す月間」実施中。
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罰の時間

2014/09/10 18:45
 ブログの質で勝負が出来ないならば、量で勝ってやろうじゃないか、というわけで頑張って更新をしています(しようとしています)。
 この「ペンギンブックカフェ」を始めて9年目に突入しているみたい。なんとまぁ、私にしてはよくやってるねぇ(休みがちではあるけれど)。こんなに長くやっていると、おんなじグチばっかりとか何度も繰り返す思い出話とかどこかで聞いたことのあるような言い回しであるとか使い回しの常套句とか、わかっちゃいるけどつい出てしまうってなもんなんだ。許して欲しいんだなぁ。もうしばらく続けるからさぁ。

『死の天使はドミノを倒す』太田忠司(文藝春秋)読了
  * * * * * * * * * * * * * *
――人権派弁護士の弟はなぜ消えたのか? 家族を捨てて我が道を行く弟・薫は“死の天使”こと嶌崎律子の弁護を買って出た直後、謎の失踪を遂げる。
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 時には社会派ミステリ作家、またある時は本格ミステリ作家、またまたある時はユーモアミステリ、ジョブナイルミステリ、SFっぽいものもあり、まぁようするになんでも書いてしまう作家さんである。何故かデビュー以来、大好きなのです。
 どんなジャンルの作品であっても、一本筋が通っているというのか、作家の信念みたいなものが感じられるからかなぁ。それは「生」を描いても「死」を描いても疎かにしないっていうところ。そういうところが信じられる作家さんなんだなぁ。
 この作品、社会派ミステリと見せながら、徐々に本格物になっていくところが見事な作品なのです。(80点)

『わたしが出会った殺人者たち』佐木隆三(新潮文庫)再読
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――犯罪事件を取材して半世紀。幾多の殺人の真相を書き続けてきた作家が、古希を越えた今、これまでの取材を振り返り、殺人者との交流を回想する。拘置監で大粒の涙を見せた無期懲役囚、「自分を小説に書いてくれ」と資料を寄越した家族殺害犯、著者が喪主を務めた前科十犯の男−。昭和・平成を震撼させた凶悪犯18人の知られざる肉声や人間臭い横顔を描く、著者の集大成的な犯罪回顧録。
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 何をいまさらの作家さんであり作品なのですが、新潮文庫になったのを機に再読となりました。興味深いと簡単に言ってしまってはまずいのかも知れないが、底知れぬ暗闇を見せつけられ震撼とするとともに、もしかして誰もが持っている闇なのではないかと気がつきまたまた震えがきてしまう。
 記述の視点やら時間があっちこっちと動きすぎて、今一つ集中できない文章ながら、この手の本はどうしても手が出てしまうのです。(75点)

『五覚堂の殺人』周木律(講談社ノベルス)読了
  * * * * * * * * * * * * * *
――放浪の数学者十和田只人は、超越者善知鳥神に導かれ、雪の残る東北山中の館−“五覚堂”へと足を運んだ。そこで神に見せられた記録媒体には、ごく最近、五覚堂で起きたと思われる、哲学者を父に持つ一族の遺産相談に纏わる、連続密室殺人事件の一部始終が! だが、五覚堂は事件の痕跡が拭い去られている…。消失した事件の解とは!? 加速するシリーズ第三弾!!
  * * * * * * * * * * * * * *
 文句を言いながらもシリーズ3作目も読んでしまった。世間では4作目が出ているみたい。
 この人のこのシリーズって、どうしても後出しミステリのような気がしてしょうがない。読者をミスリードさせといて新しいアイテムを出してくるっていう感じ(意味わかるかなぁ)。これって、反則一歩手前じゃない? 今一つわけわかんない登場人物たちのキャラを含めての魅力を感じてよ、っていうシリーズなのかなぁ。次も読むけどさ。(72点)

『リップステイン』長沢樹(双葉社)読了
  * * * * * * * * * * * * * *
――僕は渋谷の街角で、殺人鬼を追うきみと出会った。ある時は「武者修行中」と笑い、またある時は傷だらけで電話してくる。世間が震える連続事件の現場に必ず現れる美少女。君は一体、何者なんだ? 張り巡らされた謎、緊迫のクライマックス。ストーリーテリングの手腕が炸裂する、青春ミステリーの新機軸!
  * * * * * * * * * * * * * *
 「樋口真由“消失”シリーズ」を書いている作家さんらしい作品と言えばいいのかな。どっかでリンクしているのかと期待していたのだが、どうも単独作品らしい(多分)。この人の小説って、「結局、一体何が言いたいんだ」っていう気になるのはどうしてだろう。読み込めてないっていうことなのかなぁ。面白いんだけど、読後になんにも残らないんだよなぁ。構成を凝っている割に凝っている理由がわからない感じ、かな。(面白いんだって。74点)

『上石神井さよならレボリューション』長沢樹(集英社)読了
  * * * * * * * * * * * * * *
――成績不振の草食系写真部員・設楽洋輔。眉目秀麗で天才で変態の岡江和馬から、勉強指導と引き換えに鳥好きの美少女・川野愛香の盗撮を請け負うが、不可解な「消える」事件に巻き込まれ…。
  * * * * * * * * * * * * * *
 上記『リップステイン』を読み終えた時に、あぁそういえばこの作品をまだ読んでいなかったと気が付いて、急いで手にしました。
 これ、面白いではないですか。途中から「美少女・川野愛香」はどこいったぁ、っていう感じになったのは笑ってしまったのですが、この作家さん、もしかしてこういう単純な構成の方がいいんじゃないか。これってシリーズ化するんだろうか。もしかしてもうなってる? また読んでみたいと思わせるものはあったかな。(生意気ですが、76点)

(これからの不安)
 まだまだアップしていない読了本があるんだけど、どうしようかなぁ。
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今ここに未来を見せてくれ

2014/09/09 18:06
 なんでもかんでも書きゃいいってもんでもないだろうが、あくまでも「読書日記」という形を死守したいという気持ちがあるので、溜まってしまった読了本のことだけは記録しておこうかなっていうことで、面白くもないでしょうがお付き合い下さいませ。

『逃北−つかれたときは北へ逃げます−』能町みね子(文藝春秋)読了
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――嫌なことがあってつかれ切った日に、都会の生活に倦んだ時に、私は「北」方面に旅立ちます。会社を辞めようと決めた日に、30歳の誕生日に、旅行の目的地は…。やはり向かう先は「北」なんです。北海道、青森、宮城、新潟など日本の北からグリーンランドまで。何から逃げているのか。そして何が待っているのか。旅をしながら「北」に惹かれてしまう理由を探り、自らのルーツを探す10年間を描いた「逃北」エッセイ!
  * * * * * * * * * * * * * *
 流行ものには遅れてついていくという性格のため、何を今さらの感は否めないのですが、今一番注目している存在の“能町みね子”さんの著作です。
 気になる人に無理やりにでも私との共通項を見出そうとする悪しき性質は、この本の中に書かれている、祖母の生れた宮城県の角田市という地名に引きつけられた。「おっ、おいら、ここに1年間だけ住んでた!」。まぁ、ただそれだけの共通項ではあるのだが、それだけに、今一押しの(職業はなんなのかよくわかんないのだ)方です。

『ぼくの絵本じゃあにぃ』荒井良二(NHK出版新書)読了
  * * * * * * * * * * * * * *
――自分の中の「子ども」の部分を引っ張りだして描く−。起承転結のないストーリーに、プロが描いたとは思えない絵。大人の常識にしばられず、子どものように自由に考え、描くのが「荒井良二の絵本づくり」だ。折れた色鉛筆の芯を使ったり、絵の具を指で塗りたくったり…。型破りな創作術に、100冊以上の絵本を生み出してなお、尽きることのないイマジネーション。その秘密は、自分の中の「子ども」の部分にあった。日本を代表する絵本作家が自らの個人史にも立ち返りながら、子どもから大人までを魅了してやまない、創作と発想の核心について記す。
  * * * * * * * * * * * * * *
 “荒井良二”さんの底なしのバイタリティーにあこがれての読書。行動する中に「自由」は現れるのだ、っていうことに、いい加減に気がつけよ、オレ。

『熊谷守一−画家と小さな生きものたち』林綾野(講談社)読了
  * * * * * * * * * * * * * *
――自宅の庭を丹精し、訪れる小さな生き物、育つ植物を描いた熊谷守一。今でも家族が守る庭と守一の作品のつながりをわかりやすく紹介。
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 この歳になってようやくわかり始めた“熊谷守一”さんの絵のすばらしさ。若いことってたいしたことないんだよな、きっと。この本を見ているだけで今日は生きていけると思わせるのだ。

『京都ごはん日記』いしいしんじ(河出書房新社)読了
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――「しんじさん、京都はどう?」朝から創作。昼を過ぎれば、飲んで食べて唄って踊り、神社に本屋にレコード屋、錦やメトロをぶらぶらし、全国各地を飛び回る。鯖寿司、焼き鳥、お好み焼き、ビールに焼酎、さあ乾杯! 作家・いしいしんじと過ごす“春夏秋冬”。巻末特別付録「いしいしんじの京都地図」「美味しい店紹介」他。
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 なかなか“いしいしんじ”さんに成れないでいるのだ。いくら本を読んでもおいしいものを食べてもお酒を飲んでも絵を見ても音楽を聞いても町をぶらぶらしても、ダメなんだなぁ。そして今日も“いしいしんじ”を目指すのだ。

『菊地信義の装幀』菊地信義(集英社)読了
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――ここに、本がある−。世紀をまたぎ出版文化を牽引しつづける菊地信義のブックデザイン集。1997年から現在までの仕事から約1400点を厳選し、「形体」「文字」「図像」からなる三部構成で提示する。
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 以前も書いたことだけど、初めてブックデザイナーを意識したのはこの“菊地信義”さんだった。この本を見ていると、自分の読書遍歴になっていることに、自惚れながらも嬉しくって楽しくって、おいらも捨てたもんじゃないじゃないかと思ったりしたのでした(ちと大げさ)。

『パブロ・カザルス−奇跡の旋律−』ジャン=ジャック・ブデュ著/細田晴子監修/遠藤ゆかり訳(創元社/知の再発見双書)読了
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――チェロの近代的奏法を確立した20世紀の巨匠の生涯。カザルス以前のチェロは、ピアノやヴァイオリンよりも劣る楽器とみなされ、その音色は耳ざわりとまで言われることもあった。しかしカザルスは演奏の姿勢から技法までを改革し、自然な演奏を可能にした。また、スペインのカタルーニャ地方出身であり、フランコ独裁政権への抗議や反ファシズムの姿勢を取り続けた平和活動家としての顔も持つ。「奇跡の旋律」が生まれた歴史に迫る。
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 チェロが好きです。生まれ変わってどこをどう間違えてか音楽の天才だったら、絶対「チェリスト」になるんだ。そして“パブロ・カザルス”を尊敬していますって言うんだ。きっと。

(今日のいつもの反省)
 つまらん更新ですまん。
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なぜこんなにも空が気になる

2014/09/09 08:10
 8月は何を思ったのか、本当に夢中になって「“宮部みゆき”さんの作品を読み直そうよ月間」だったなぁ。旧作を読み直していたら思いがけず新刊が出たりして、なんかこう身体に沁み込んだ新刊ハンターとしての血が「今は“宮部みゆき”だぞ」と囁いていたかのようだ(大げさかな)。

『荒神』宮部みゆき(朝日新聞出版)読了
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――時は元禄、東北の山間の仁谷村が一夜にして壊滅状態となる。隣り合う二藩の因縁、奇異な風土病を巡る騒動…。不穏さをはらむこの土地に“怪物”は現れた。仁谷擁する香山藩では病みついた小姓・直弥や少年・蓑吉らが、香山と反目する永津野藩では専横な藩主側近の弾正や心優しきその妹・朱音らが山での凶事に巻き込まれていく。恐るべき怪物の正体とは? 交錯する北の人々はそれぞれの力を結集し、“災い”に立ち向かう!
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 時々こういうとんでもない作品を出してくるのが“宮部みゆき”さんの真骨頂なんだよなぁ。
 この作品の何がすごいかって、怪しくて恐ろしい「怪物」が出てくるお話と思わせておいて、実は真に恐ろしいのは「人間の欲」であり「人間の性(さが)」なんだよと、さり気なく軽く説いていくところ。
 これを当たり前の展開と小説の常道と思うなかれ。「怪物」の底知れぬ不気味さと対をなすかのような「人間」のどうしようもない醜さを淡々と描きながらも、それでもなお他人を思い、真摯に「生きる」ということに向かう人々がいるということ、その力強さをきっちりと書き込んでいるところが他の小説とは違うのだ(何を言ってるんだか。89点)。

 この本と同時に、新聞連載時に挿絵を担当した“こうの史代”さんの『荒神絵巻』っていうのが出ているんだよねぇ。これも欲しいんだよなぁ。

(今の心配)
 このブログ、いつまで続くんだろうなぁ。
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瞬間の迷い

2014/09/08 17:14
 あんまり真面目にテレビドラマなんて見ない方なのですが、何故かTBSテレビの『ペテロの葬列』(毎週月曜日午後8時放送)は観ているのだ(もうすぐ終わるけど)。
 多少、大げさで思わせぶりなところが気になるけど、配役はピッタリだし、まぁまぁ原作に忠実に作られているのではないかと、冷静な口調の割に結構ワクワクドキドキしながら楽しみにしているのです。
 そんなこんなで突然、この「杉村三郎シリーズ」を読み直したくなった次第。

『誰か−Somebody』宮部みゆき(文春文庫)再読
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――今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たちの相談を受ける。亡き父について本を書きたいという彼女らの思いにほだされ、一見普通な梶田の人生をたどり始めた三郎の前に、意外な情景が広がり始める−。稀代のストーリーテラーが丁寧に紡ぎだした、心揺るがすミステリー。
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『名もなき毒』宮部みゆき(文春文庫)再読
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――あらゆる場所に「毒」は潜む−。財閥企業で社内報を編集する杉村三郎が、私立探偵・北見を訪れて出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。現代ミステリー。
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『ペテロの葬列』宮部みゆき(集英社)再読
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――今多コンツェルン会長室直属・グループ広報室に勤める杉村三郎はある日、拳銃を持った老人によるバスジャックに遭遇。事件は3時間ほどであっけなく解決したかに見えたのだが−。しかし、そこからが本当の謎の始まりだった! 事件の真の動機の裏側には、日本という国、そして人間の本質に潜む闇が隠されていた! あの杉村三郎が巻き込まれる最凶最悪の事件!? 息もつけない緊迫感の中、物語は二転三転、そして驚愕のラストへ! 『誰か』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ待望の第3弾。
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 今回読み直して感じるのは、これって良く出来てるなぁということ。初めからシリーズ化を考えての創作だったのかなぁ。3作目でこういう展開になるなんて、誰も予想していなかったんじゃないかなぁ。さすが“宮部みゆき”さんと改めて唸ってしまいました。
 家族に無理やりドラマを見せて、娘に無理やり本を読ませてしまいました。

 そんでもって調子に乗ってしまって、8月は急遽「“宮部みゆき”さんの作品を読み直そうよ月間」となったのでした(回想)。

『ソロモンの偽証 第T部−事件−』宮部みゆき(新潮社)再読
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――クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。その死は校舎に眠っていた悪意を揺り醒ました。匿名の告発状、新たな殺人計画、マスコミの過剰報道、連鎖する犠牲者。死体は何を仕掛けたのか?
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『ソロモンの偽証 第U部−決意−』宮部みゆき(新潮社)再読
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――中学校の裏庭で死体で発見された柏木卓也。保身に身をやつす教師を見限った生徒たちは、彼の死を争点に学校内裁判を開廷する。期限は15日。不可解な弁護人の降臨を機に、証人探しが加速し…。
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『ソロモンの偽証 第V部−法廷−』宮部みゆき(新潮社)再読
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――次々と解かれていく事件の封印。一方、陪審員たちの間では、ある人物への不信感が募っていた。そして最終日。最後の証人を召喚したとき、学校内裁判の骨組みそのものが瓦解した…。
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 いやはや、再読でも一気読みの「凄さ」でした。読み終えて数日は虚脱状態でした。
 読んでいる途中で、第T部/事件が新潮文庫の新刊で出ましたねぇ。来年は映画化とか。いやはや、どうやって映画にするのかね、と心配ではあるのですが、映像化したいと思わせる衝撃作ではあります。

 もちろん、うちの娘にも読ませたのですが、「あんな中学生っているかなぁ」「私は傍観者だな」という感想でした。そしてただ今、私と同じように虚脱状態に陥っています。

(へぇー!)
 一日に2回も更新したぜ。
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想わないまま無くなったもの

2014/09/08 10:07
 先週の土曜日は鎌倉へ。ここんとこ涼しくなったので、これまでやったこともない古都巡りなんていいんじゃないかと思っていたのですが、なんだよ、めちゃくちゃ暑いじゃないですか。いつものように母親の家に行ってしゃべってお昼食べて珈琲飲んで帰ってきました。あっそうだ、鎌倉の駅前で作家の“高橋源一郎”さんを見かけた。すげぇ、やっぱり鎌倉だぜ。

『優雅なのかどうか、わからない』松家仁之(マガジンハウス)読了
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――48歳にして再び独身になった主人公、匡は、吉祥寺にある古い一軒家を老婦人に借り受け、自分好みに改装を始める。気楽な一人暮らしは、順調に滑りだすが、かつての恋人、佳奈とばったり再会。佳奈は、父親とふたりで同じ町に住んでいた…。「気ままな一人暮らし。うらやましいかぎりだなあ。これを優雅と言わずして、なんと言う」。まわりにそう言われることに違和感を覚えつつ、佳奈との関係を取り戻したいと願う匡だが、彼女の父親は認知症となり、いつしかその介護に巻き込まれていく。自分の家と行ったり来たりの生活は、さらに思わぬ展開となり、どう暮らしたいのか、誰と生きたいのかの選択を否応なく迫ってくる…。かつて妻や息子と暮らした代々木のマンション、一人になって借り受けた、井の頭公園に接した古い一軒家。吹き抜け、窓、灯り、テラス、暖炉、キッチン…。随所にあふれる細かい家の描写が、物語に柔らかな深みを与えている。(ちょっと長い引用ですが、なかなかいい文章だったもんで)
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 私的に今もっともメロメロに新刊の発売を待っている作家さんの3作目(興奮しすぎて日本語が変)。

 なんでもなくてそれほどでもないよなぁという内容が淡々と続くお話でありながら、なんでもなくはなくてそれほどのものではないよと淡々と静かにそれでも秘めた熾火のように感動してしまう小説(例えがヘタですがそんな感じ)。
 人と人の関係の中に、知らぬ間に入り込む「家」と「景色」と「時間」と「猫」の存在。そしていつの間にか気がつくのだ、一人はなんて多くのものを抱えて生きているのかと。
 女性の方には納得できない生き方かなぁと、恐々と感じながらの読書ではありますが、そんなこと超越しての読み方をお願いして超お奨め本なのです。(まぁ、88点ということで)

(いいかげんにしろの毎日)
 溜まった本の感想をどうしようかなぁ。
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長い空間

2014/09/06 22:33
 またまたまた長―いお休みをしてしまった。何かがあったわけではなく、ただ何にもなかったからです。いろんな方面にペコペコペコと頭を下げちゃいます。ごめんなさい。

 本を読んでいなかったというわけでは全くなく、逆に、生まれてからこんなに本を読んだことなんてなかったんじゃないかっていうくらいに読んだ読んだ読んだ。でもやっぱりちっとも賢くなったなぁとか物知りになったなぁとか人間として成長したなぁとか思えないのは寂しい限りなのです。

『壁と孔雀』小路幸也(早川書房)読了
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――警視庁SPの土壁英朗は仕事の負傷で休暇を取り、幼い頃両親の離婚で別れたまま2年前に事故死した母の墓参りに赴く。北海道にある母の実家は町を支配する名家で、今は祖父母と小5の異父弟・未来が住んでいた。しかし初めて会う未来は自分が母を殺したと告げ、自ら座敷牢に篭もっていた。その真意とは? さらに町では謎の事故が相次ぐ。信じるべきものがわからぬまま、英朗は家族を護るため立ち上がる。
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 ブログを長期間にわたってサボっていて、さぁ復活するかというと何故か“小路幸也”さんの作品になってしまうのは、あぁえぇ、意図してのことです。
 この本、発売されて日本で最初に購入したのは私です、っていうくらいに早く手に入れて読了はしていたのです(後の祭り)(本当です)(ちょっと自慢したかったのです)。

 小路さんが“エラリィ・クイーン”ファンというのは知っていたけど、これまでの作品には、それとなくなんとなくかすかにその気配がありそうでなさそうでだったのですが、今回の作品はいきなり舞台となる地名が〈来津平〉にはひっくり返った。おもしろいではないですか。
 もういつでも期待して安心して読める小路作品ではあるのですが、今回の作品、もうちょっと書き込んでもよかったのでは。主人公の土壁英朗はじめ、未来君や他の登場人物の造形が秀逸でありながら、お話自体があっさりしすぎているような気がするのです(高望みです)。名作『HEARTBEAT』のような複雑さが欲しかったなぁ。でもでも一気読みでしたよ、もちろん。

『スターダストパレード』小路幸也(講談社)読了
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――元暴走族のヘッド・マモルが刑務所から出所した日に、彼を無実の罪で逮捕した刑事・鷹原が迎えにきた。鷹原は、母・ジョゼットを不審な死で亡くした少女・ニノンが何者かに狙われているため、三重にいる鷹原の元妻・美里のところへ連れていくようマモルに依頼。マモルに去来する美里との過去と想い−。マモルとニノンは無事に辿り着けるのか? そしてジョゼットの死の真相とは? 生きていていいんだってあの人に教えてもらったんだ−。
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 これも多分、日本で一番最初に購入し読了したのは私であろうと思われる(自惚れ)。
 小路さん自身がしつこいくらいに言っているみたいですが、確かに講談社からの出版は久しぶりですね。講談社はもっと沢山まじめに小路さんの作品を出版するように(お願い)。

 前作『壁と孔雀』と同じように、なんかもったいない作りなんだよなぁ。これって今後シリーズ物になりそうな感じなので、これはこれでいいのかも知れないけれど、小路さんの作品の面白さって、もう一つ全く別の雰囲気を持っていながら微妙にリンクするお話が入っていたような気がするんですよ。それが最後の最後につながって驚いてびっくりして感動して唖然として……、だったんだよなぁ。うーむ、もちろんあっという間の一気読みの面白さではあるのだが、あっという間に終わってしまった感が拭えないのだ。もう一回読んでみるか。

(ものすごい言い訳)
 読むスピードにブログの更新が追い付かない。
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